【登辞林】(登記関連用語集)


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失火責任法 (→失火ノ責任ニ関スル法律)

失火ノ責任ニ関スル法律 明治32年3月8日法律第40号。民法の不法行為責任の例外を定めるもので、失火の場合は、失火者に故意又は重大な過失が無い限り、損害を賠償する責任を負わないとされる(同法第1条)。この法律の条文はこの一条のみである。

十干 時間や方位を表す際に用いられる、甲(こう)、乙(おつ)、丙(へい)、丁(てい)、戊(ぼ)、己(き)、庚(こう)、辛(しん)、壬(じん)、癸(き)の総称。それぞれ五行(木・火・土・金・水)と陰陽(陽は兄(え)と陰は弟(と))を組み合わせ、「甲、乙、丙・・・」に対し「きのえ、きのと、ひのえ・・・」と割り当てられる。「十二支」とあわせて「干支(えと、かんし)」と呼ばれ、「干支」を「えと」と読むのは、これに由来する。
十干(甲、乙、丙・・・)は、契約等の当事者を表すのに「○○株式会社(以下、「甲」という。)」等と用いたり、事項の仮定や列挙(「甲物件」「乙物件」、「甲説」「乙説」、「甲欄」「乙欄」等)にも用いられる。不動産登記記録において、所有権に関する事項は、「甲区」に記録され、所有権以外の権利に関する事項は、「乙区」に記録される。

質疑応答 (株)テイハン発行の月刊登記実務専門誌「登記研究」に掲載されている記事で、購読者から寄せられた登記実務上の質問について、法務省民事局担当者の回答が加えられたもの。法的な拘束力はないが、法務局の登記実務対応において重要な指針となっているため、事実上の拘束力がある。

執行供託 執行手続において、執行機関(裁判所書記官、執行官等)、執行債務者、第三債務者等が、執行の目的物を管理及び配当等を行わせるためにする供託。執行供託として、次のものが挙げられる(滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律第20条の6、第36条の6等)。
1.民事執行手続に関するもの(強制競売強制管理等)
2.保全執行手続に関するもの(仮差押仮処分の執行等)
3.担保不動産競売等に関するもの
4.滞納処分に関するもの(国税徴収法第133条第2項、第3項、国税徴収法施行令第50条)
5.強制執行等と滞納処分との手続の調整に関するもの

執行証書 債務名義のひとつで、金銭の一定の額の支払又はその他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とする請求について公証人が作成した公正証書で、債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述が記載されているもの(民事執行法第22条第5号)。

執行文 債務名義に執行力が存在すること、及び、その内容(当事者、目的物等)について、裁判所書記官、又は、公証人が付与した文言。
執行文は、申立てにより、執行証書以外の債務名義については、事件の記録の存する裁判所の裁判所書記官が、執行証書についてはその原本を保存する公証人が付与し、執行文の付与は、債権者が債務者に対しその債務名義により強制執行をすることができる旨を、債務名義の正本の末尾に付記する方法により行う(民事執行法第26条)。
強制執行は、執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施されるが、少額訴訟の確定判決、仮執行宣言付少額訴訟判決、仮執行宣言支払督促による強制執行は、その正本に基づいて実施される(民事執行法第25条)。
(→条件成就執行文)(→承継施行文

執行役 取締役会の決議によって委任を受けた委員会設置会社の業務の執行の決定(会社法第416条第4項)、及び、委員会設置会社の業務の執行を行う機関(会社法第418条)。委員会設置会社は1人又は2人以上の執行役を置くことを要し、取締役会の決議にて選任する(会社法第402条第1項、第2項)。執行役は、取締役を兼ねることができる(会社法第402条第6項)。株式会社又はその子会社の執行役は、会計参与となることができない(会社法第303条第3項)。監査役は、株式会社若しくはその子会社の執行役を兼ねることができない(会社法第335条第2項)。監査委員会の委員は、委員会設置会社若しくはその子会社の執行役を兼ねることができない(会社法第400条第4項)。
執行役の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結後最初に招集される取締役会の終結の時までであるが、定款によって、その任期を短縮することができる(会社法第402条第7項)。委員会設置会社が委員会を置く旨の定款の定めを廃止した場合には、執行役の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する(会社法第402条第8項)。
この「執行役」は、会社に一般に置かれる「執行役員」とは異なる。(→代表執行役

執行役員 (1)代表取締役の指揮・監督のもと、業務執行を行う者。会社法上に規定はなく、会社法上の機関又は役員でもない。会社法上の執行役(会社法418条)とも異なり、会社法上は、「使用人」にあたると考えられる。取締役会を実効性のあるものとするため、取締役の人員を抑える場合に、「会社法上の役員」でないが、会社内部で「事実上の役員」たらしめるため、利用されることがある。
(2)投資法人を代表する者(投資信託及び投資法人に関する法律(昭和26年6月4日法律第198号)第109条)。

執行猶予 刑の言渡しをした場合に、情状により、一定期間、刑の執行を猶予し、猶予期間を無事経過したときは、刑の言渡しの効力を失わせる制度(刑法第25条)。前に禁錮以上の刑に処せられたことのない者、又は、禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことのない者が、3年以下の懲役もしくは禁錮又は50万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状によって裁判確定の日から1年以上5年以下の期間、その執行を猶予することができる。前に禁錮以上の刑に処せられその執行を猶予された者が、1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、執行の猶予をすることができる(再度の執行猶予)が、保護観察中に更に罪を犯した場合には執行猶予をすることはできない。通常の執行猶予では任意的に、再度の執行猶予では必要的に保護観察に付される。執行猶予の言渡しを取り消されることなく猶予期間が満了した時は、刑の言渡しは将来に向けてその効力を失い、各法に定める欠格事由にも該当しなくなる(司法書士法第5条第1号、会社法第331条等)。(→刑の時効

失踪宣告 失踪者の生死が一定期間明らかでない場合に、失踪者を死亡したものとみなす制度(民法第30条、第31条)で、利害関係人の請求により、家庭裁判所が行う。不在者の生死が7年間明らかでない場合の「普通失踪」と、危難に遭遇した者の生死が1年間明らかでない場合の「危難失踪」とがある。失踪者が生存すること、又は、死亡したとみなされた時と異なる時に死亡したことの証明があった場合、家庭裁判所は、失踪宣告を取り消さねばならない。失踪宣告の取消しは、失踪宣告後、その取消し前に善意でした行為に影響を及ぼさない。失踪の宣告により財産を得た者は、その取り消しによって権利を失うが、現に利益を受ける限度においてのみ、財産を返還する義務を負う(民法第32条)。

指定公証人 電磁的記録に関する事務(電子公証制度)を取り扱う者として法務大臣に指定された公証人公証人法第7条ノ2)。指定公証人の一覧が法務省民事局のホームページに掲載されている。

シティバンク,エヌ・エイ 1865年7月5日設立。平成2年7月5日、亜米利加合衆国紐育州紐育郡紐育市マンハッタン区ウオール街55番から、アメリカ合衆国ニューヨーク州ニューヨーク市マンハッタン区パークアベニュー399へ本店移転。平成18年10月1日、アメリカ合衆国ネバダ州ラスベガス市パラダイスロード3900スイート127へ本店移転。平成19年7月1日、日本における事業をシティバンク銀行(株)へ譲渡した。
シティバンク,エヌ・エイから、シティバンク銀行(株)への事業譲渡前の日付を原因とする、シティバンク,エヌ・エイを登記名義人とする抵当権等の抹消登記については、シティバンク銀行(株)、及び、シティバンク,エヌ・エイから、日本におけるすべての支店の事業の全部を譲渡した旨の証明(銀行法第30条第3項の規定による認可書を添付)を発行し、当該証明、及び、シティバンク,エヌ・エイ、及び、シティバンク銀行(株)の登記事項証明書をもって、承継を証する情報として取り扱うことができるとされた(平成20年9月24日法務省民二第2549号民事局第二課長回答)。

シティバンク銀行(株) 東京都品川区東品川二丁目3番14号シティグループセンター。平成18年5月24日設立。平成19年3月27日、JB Newco(株)から、シティバンク準備(株)へ商号変更。平成19年7月1日、シティバンク銀行(株)へ商号変更。同日、シティバンク,エヌ・エイから日本における事業の譲渡を受けた。

私的自治の原則 私人の法律関係は、国家が介入することなく、当事者の自由な意思と自己の責任において処理することができるという考え方で、民法の基本原則の一つ。私的自治の原則から契約自由の原則過失責任の原則などが導かれる。

私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律 昭和22年4月14日法律第54号。ある事業における独占的支配や、不当な取引制限、不公正な取引方法を禁止し、公正かつ自由な競争を促進すること等を目的とする法律(1条)。株式の保有、役員の兼任、合併会社分割、事業の譲受等に制限を設けるほか、公正取引委員会の設置等に関して規定を置く。「独占禁止法」「独禁法」と略される。

支店 (1)本店の指揮・監督・命令に服し、一定の範囲で独自に営業活動を行う組織。一般に、金融機関の支店は、これに該当すると考えられ、登記されている例も多い。会社法上の支店に該当するかは、「支店」「出張所」「営業所」「店」等の名称に囚われることなく、実質の判断を要する。
株式会社は、一定の場合を除き、株主総会の日から5年間、株主総会議事録の写しをその支店に備え置かなければならない(会社法第318条第1項、第3項)。
支店の所在地においては、1.商号、2.本店の所在場所、3.支店の所在場所(その所在地を管轄する登記所の管轄区域内にあるものに限る)、4.会社成立の年月日、5.支店を設置し又は移転した旨及びその年月日を登記しなければならず、1〜3の登記事項に変更が生じたときは、当該支店の所在地において3週間以内にその変更登記をしなければならない(会社法第930条第2項、第3項、商業登記法第48条第2項)。本店及び支店の所在地において登記すべき事項について支店の所在地においてする登記の申請書には、本店の所在地においてした登記を証する書面を添付しなければならず、この場合においては他の書面の添付を要しない(商業登記法第48条第1項)。
(2)会社の支店の住所。会社の支店の具体的な所在場所。「支店の所在場所」(会社法第911条第3項第3号)のこと。「東京都千代田区九段南一丁目1番15号」等。

支店区 会社の登記記録において、支店に関する事項が登記される区。

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